<四国の近代建築知っていますか>JR琴平駅(香川)

 

「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮(香川県琴平町)から北東に約1キロ。参拝客らを迎える土讃線の駅は、白壁に柱や梁はりの茶色が映える。この2色で整えられ、玄関屋根の三角形と半円の窓もかわいらしい西欧風の外観は、1923年(大正12年)の開業時の姿を再現したものだ。耐震改修に合わせ、昨年3月に一新された。

 「町のもてなしの拠点に」と地元も期待した改修では、様々な工夫が施された。屋根は軽量化のため金属瓦でふいたが、茶色のチップを吹き付けて元の色合いを再現。半円の窓が隠れる形で取り付けられていた駅名表示の電飾は「琴平驛」と記した看板に替え、屋根の下に移した。外観の美しさを損ねず、レトロな風情を醸し出すためだ。

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 東京から観光で訪れた伊東志朗さん(66)は「情緒があって、門前の町の雰囲気にぴったりの駅舎」とカメラを向けた。改修後、駅舎内に案内所を開いた町観光協会の専務理事臼杵徹さん(69)は「観光名所が一つ増えた」とうれしそうだ。

 土讃線を走るJR四国の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」のデビューに合わせ、駅には昨年3月、この列車の専用待合室も設けられ、金刀比羅宮の「金」にちなんだ金色の畳を使った腰掛けが置かれている。

 地元のスイーツなどを金色で彩り、門前の町をアピールしている町や町商工会などが寄贈した。

 駅舎改修を機に、さらなる観光振興を図ろうという機運が盛り上がり、夜の町並みを照らすライトアップも構想されている。臼杵さんは「駅舎開業100周年でも、ユニークなおもてなしのイベントを考えないと」と夢を膨らませている。